今、イタリアから日本の皆さんに伝えたいこと
(2020年3月4日に撮影したボローニャ旧市街。まだ人々は自由に外出可能だった)
親たちの間では「ボローニャも学校が閉鎖になっちゃったね。これで事態が収束すればいいけど」「1週間で子供たち学校に戻れたらいいね」と言う会話が交わされたが不平不満を言うものは少なかった。それよりも、後で過剰反応だったと思うかもしれないが、大事をとり即座に予防措置を決断した州知事の判断を称賛する意見が多かったように思う。日本で同様に「明日から学校閉鎖」と前日の夕方に発表があったらどれだけ反発が出るだろうか? この時点では、まだ予防のための措置という認識。
この週、子供たちは家にいても親の仕事は通常通り。14歳以下の子供を一人で鍵っ子にするのが法律的に許されないイタリア。テレビではおじいちゃん、おばあちゃんに子供を預けて仕事に向かう母親のインタビューなどか流れていた。
▶︎ 2月28日(金):当面、最後の外食
この日は長男の誕生日。子供たちの学校は閉鎖中のため、せめて好きなものを作ってお祝いしようとリクエストを聞く。長男が「ミックスベリーと生クリームを添えたホットケーキが食べたい」と言うのでスーパーへ。州知事の措置が発表されてからSNS上で「イタリアのスーパーからパスタや消毒液が消えた」との投稿が増えたので、どんなものかと思っていたが、びっくりするほど日常の風景がそこにあり、ちょっと拍子抜けした。
この日、ロンバルディア州の措置が一段と厳しくなる。夜18時から朝6までバール(喫茶店)や夜間営業の店、娯楽施設の夜間営業が休止される等の措置が発表。「18時から時間制限で閉めるって意味あるのかな? ウイルスに時間なんて関係ないのでは?」と思っていた。しかし、我がボローニャでは、レストランは通常通りオープン。「学校閉鎖の時に外食に行くなんて」と少し思ったが「年に一度の誕生日だし、短時間で済ませればいいか」と、家族でささやかに息子のお祝いをしに行った。ウイルス感染が隣の州で拡大しているというのにレストランは満員だった。そして、これが当面、最後の外食となるとは、この時は想像もしていなかった。
▶︎ 2月29日(土):新型コロナウイルス、ボローニャへ
「来週から学校は再開するの?」と親たちのチャットグループが沸き立ち始める。1人の母親が「新しい情報ある?」と聞くと、別の母親からニュースが届いた。しかし、また別の母親が「これはフェイクニュース。冷静に州知事の記者会見を待とう」と諭す。こんな時期に州知事のコメントのフェイクニュースを流す馬鹿げた人がいるもんだ、と呆れた気持ちになる。午後に行われた州知事の会見では、予想通りもう1週間学校閉鎖が延期されるとの発表があった。その日の親たちのチャットの最後で「ボローニャ初の感染者2人確認」と言うニュースを知る。どちらもロンバルディア州を訪れた後に発症とのこと。いよいよ、新型コロナウイルスがボローニャにもやってきた。
▶︎ 3月1日(日):新型コロナウイルスに負けるな!のイベントは良かったのか?
ボローニャではこの週末、市議会議員が「コロナウイルスで危機に陥っているボローニャの文化を支援しよう」と呼びかけ「La Card Cultura」という博物館の入場が12カ月間無料になったり割引されるカードを市民に配るイニシアチブが行われた。コロナ騒ぎで塞ぎがちな市民を元気付けたいという気持ちは痛いほどわかる。
私も「こんなカードがもらえるらしいから、家族みんなで散歩がてらに行こうか?」と29日には言っていたのだが、その夜にボローニャで感染者がでたというニュースを聞いて「1人25ユーロのカードのために今リスクをとるのは賢明ではない」と、長蛇の列に並ぶのを断念。ちなみに、この週末、寒い中カードをもらった人は合計24600人。年金受給者など高齢者も列に並んでいたという記事をあらためて読み、ここでも感染があったのでは?と少し思ってしまう。
一方、日本の外務省のホームページでは「ロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州への渡航危険度をレベル1から「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」へ引き上げるとのお知らせがあった。つい2週間前までは「コロナウイルスが流行っているから、今年の夏、日本へは行かない方がいいかもね?」と言っていたのに、立場が逆転したことにハッとする。
▶︎ 3月2日(月):誕生日会の行方
3月8日(日)に次男の誕生日会をクラスの友達2人と会場を借りて共同開催予定であったが、学校閉鎖とイベント禁止の措置がでているので、問題なく会場が使用できるのか気になり3月2日に電話を入れる。先方からは「問題なく使用できる」と回答があり、クラスメートに「予定通り誕生日会開催」と伝えると、ほとんどのクラスメートが参加の返事。来週になれば子供たちも学校が再開するから、1日早くみんなと遊んでもいいよね、という雰囲気で、まだまだみんな楽天的。
3月3日には他の母親たちと役割分担などをチャットで相談し、いよいよ買い出しに走ろうか、と考えていた4日、会場責任者から電話が。州から「人との距離を1メートル取れなければ集まってはいけないという通達が出たため、今回の誕生日会の会場予約はキャンセルとなります。ついては、予約金を取りに来てください」と。早速、会場に向かうと会場責任者から「老人に触れちゃダメだよ」と一言添えてこんな紙を帰り際に渡された。
タイトルはこうだ。「人との接触、ハグや握手は避けること。人混みを避け、高齢者は自宅に」。記事の中では「集会や会議に加え、1メートル以上の安全距離が取れない場合は屋外でのスポーツなどのイベントも禁止」また「感染の危険地域に赴いたことのない、もしくは感染の可能性がある人とコンタクトをとったことのない人でも、少しでも熱があれば自宅にいること。また、75歳以上の人、65歳以上で病気を患っている人は人だかりを避けること」と書かれている。「老人に触れちゃダメ」と言われた時は「ん? 老人に優しくしなくていいだなんてなんてことを言うんだろう?」とすぐに飲み込めなかったのだが、記事を読んで「お年寄りを感染から守るために、今は距離を取らなくっちゃいけない時なんだ」と理解する。「週末の誕生日会はなくなったけど、また1カ月もすれば日程を変更してできるようになるかな」という希望はあった。でも、先週2人だった感染者数が1週間で41人まで増えている。本当に収束へと向かっているのだろうか? ボローニャで感染者が確認される前までは結構のんびりと構えていたが、そんな状態では無くなってきているのかも?と感じるように。
▶︎ 3月5日(木):イタリア全土の学校閉鎖
この日、コンテ首相はアッゾリーナ教育相とともに記者会見を行い、イタリア全土で3月5日から15日まで学校・大学を閉鎖することを決定。北イタリアだけの問題ではなくなってきた。
▶︎ 3月7日(土):マスクがない
この日は朝から日本の母に感化されガーゼマスク作りを開始。感染予防にはならないと聞くが、自分が軽症でコロナウイルスに羅漢している場合、マスクをしていれば他人への飛沫感染を少しでも防げると信じて。
これからの季節、通常の風邪を引いたときのためにもエアロゾル(日本の耳鼻咽喉科で使用される噴霧器のポータブルバージョン。子供がいるイタリアの家庭では冬の必需品)用の薬が必要になるだろうと思って薬局へ向かう。家を出る前、夫に「マスクしていった方がいいんじゃない?」と言われ「そうだよね」と作りたてのマスクをして外出。
イタリアでは、風邪をひいても、花粉症でもマスクをする習慣がない。マスクをしている人を見ると保菌者扱いだ。先週、夫が職場で感染予防に関してマスクの重要性を話したところ「マスクなんて意味がない」と半ば同僚と口論になったと言う話を聞いていた。だから、イタリア人がマスクを使う習慣がないなら、もしかしたらウイルスの侵入を防げる高性能マスクがまだ売れ残っているかも?と薬局で聞いたところ「私たちの分さえないの。来週になったら少し入ってくるかもしれないわ」と薬剤師さんが答えた。合わせて、消毒液はあるかと聞いたら「営業マンさんの好意でスプレータイプのものは入ってきたの」と。一瞬「まだ家に消毒液はあるからいらないかな?」と思ったけど、欲しい時に手に入らないことも考えられるから本体と詰め替え1本を購入。今となっては、いい選択をした自分を褒めてあげたい。その後、スーパーに自転車で向かった。マスクをしている人は私以外おらず、品物揃えもいつも通りでパスタもちゃんとあった。そんなに深刻な状況じゃないのかな?とふと思ったが、念のため(外出時に菌を触らないようにするためにも)使い捨てゴム手袋を購入。この日の外出をもって、私は家に篭り続けることになる。
そして、この日の夜、翌日からミラノを移動制限区域とするとの措置が発表された。駅にはミラノから脱出し南へ行こうと夜行列車に乗る人の行列があったと、翌朝、多数のメディアが報じた。
(出所:Giornale di Sicilia )
▶︎ 3月8日(日):隣の県まで移動禁止区域拡大
この頃「イタリアでコロナの感染者数が増えてるけど大丈夫?」と言うメールが日本から多数寄せられた。先週までの私なら「大丈夫!モノもいっぱいあるし、インフル程度のウイルスに過剰な心配をして免疫力下げてたら意味ない!」と即答していたと思うが、この日、ボローニャの隣のモデナ県も遂に移動制限区域(レッド・ゾーン)に指定されてしまったことを受け、これまでのように気軽に外出できると思えなくなっていた。明日は先週ミラノに滞在していた友達と会う予定だったが、大事をとって会うのを延期することに決めた。「14日経って(感染していないことがわかって)安心して会いましょう」と。会えるかな?会えるといいな。
▶︎ 3月9日(月):明日からイタリア全体が移動制限区域と発表
イタリア北部で移動制限をしても、新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収束しようとしない事態を受け、コンテ首相は明日10日から移動制限措置を全土に広げると発表。具体的な内容は以下の通り。
・必要性がない限り自宅待機
・仕事や医療目的など正当な理由で外出する場合は自己申告フォーマットの携帯が必要
・4/3日まで全国の学校閉鎖(ボローニャは2月24日に閉鎖開始)
・レストランやバールの営業を6時から18時までに制限
・図書館、公共施設、スポーツジムなどの営業休止
最初は1週間だった学校閉鎖が4月3日までに延期。合計6週間だ。長期戦になってきたことをひしひしと感じる。でも、感染者数が増え、医療現場に負担がのしかかっている今、我々ができることは「IO RESTO A CASA(私は家にいます)」を合言葉に感染しないように家にいること。
昨日のコンテ首相の発表を受け、今日から外出制限。夫は先週から時短になっているとはいえ、相変わらず仕事へ出かける。「外出制限が出てるのに働かないといけないなんて」と少し心配になる。友達から「スーパーには長蛇の列ができてる」と言うメールが届く。「ちゃんとモノがあるのかな?」と品揃えのことを考える。スーパーに行くのが怖いことなんて気持ちはまだない。今日もマスクをしている人は2割程度で、政府が言う安全距離の1メートルをカートを使って取ったり、レジのところにガムテープを貼って対応している模様。1メートルの距離を取るより絶対マスクをした方がいいと思うが、イタリア人にはマスクをする、なければ作ると言う発想はない。また、自己申告フォーマットに関して、県外に行く時に携帯するのか、家から外出する時に携帯するのか、対応方法に関して情報が飛び交う。
▶︎ 3月11日(水):今、自分ができること
3.11から9年目。あの日、家が流されてしまったり、大切なをなくした人のことを考えると、外出できないだけで、屋根があり、家族と一緒に眠ることのできる家があることを感謝する気持ちしかない。
▶︎ 3月12日(木):首相への信頼
「食料品,生活必需品の販売店や薬局及びスーパーマーケットを除く、全ての商業及び小売り販売活動の休止を規定する」という首相令を受け、今日から夫の仕事も自宅待機となった。「よかったね!!」と夫に伝えると「このまま経済が悪くなったら大変なことになるよ」と、彼は国が経済危機に陥るのではないかと心配の気持ちの方が先にきているようだ。でも、私としては命が一番だと思うので、仕事がなくても家にいてくれた方が嬉しい。全く根拠はないが「お金はどうにかなる」という気持ちはある。楽天的な性格でよかった。そして「これまでも国民の命を最優先に速やかに決断を下してきたコンテ首相なら、国民を見殺しにするようなことはしない」と信頼できる。
夜には、イタリア全土がもれなく外出制限の中、明日13日18時から窓を開けたりベランダに出て、離れていてもみんなで楽器を演奏しようというフラッシュモブの呼びかけがあった。久々にワクワクするイベントの呼びかけに、眠っていたサクソフォンを引っ張り出した。明日は、長男はギター、次男はキーボードの鍵盤を叩き、夫はボンゴで参加しようと思う。こんな時に音楽で繋がろうとするイタリア、いいね。
▶︎ 3月13日(金):音楽のフラッシュモブ
18時前、「ベランダに出てくる人はどれくらいいるんだろうか?」と思いながら外に出ると、以外にも時間通りに人々が続々とバルコニーに登場し始めた。最初は思い思いに楽器を演奏したりしていたが、そのうち「歌える曲をお願い!」とリクエストしたり、鍋を叩いて参加いる人もいっぱい。これまで話したことのない、向かい側の建物の人とも挨拶を交わす。
「Rimaniamo distanti oggi per abbracciarci con più calore e per correre insieme più veloci domani(今日は離れていよう。明日より熱く抱き合えるように、より早く一緒に走れるように)」と言うコンテ首相の言葉が胸に響く。
▶︎ 3月22日(日):スーパー今週から日曜閉店&アビガンの問い合わせ
今週から日曜日はスーパーは閉鎖されることになった。働いている人のことを思ったら、1日くらい店が開いてなくても全く問題ない。買い物を計画的にすればいいだけだ。スーパーの日曜日閉店とともに昨日コンテ首相が発表したのは、明日から「イタリア全土で生活に絶対必要と判断される以外の全ての生産活動を中止する」ということ。工場での感染が多々あると指摘されているためだ。まず、何事も判断基準は「人の命が第一」。
そんな中、ボローニャ在住の日本人の知り合いの元には朝から問合せが沢山あったと言う。それは「アビガン」に関して。なんでも、日本滞在中のイタリア人が「日本人がマスクもつけずに呑気に外出しているのは「アビガン」があるからだ」と、根拠のない情報を流したからだ。ご存知の通り新型コロナウイルスに関してアビガンが効果があるかどうかは臨床実験中。でも、日本人が普段のように外出している姿は、彼の目にはそうでも思わないと説明がつかなかったのかもしれない。実際、私もイタリア人の友達から「色々と記事を読んでいるんだけど、どうしても日本の感染率の低さが理解できないの。真理はどう思う?」と質問を受けた。個人的な意見として、マスクや手洗いうがいを小さい頃から教え込まれている日本国民の公衆衛生の高さや、ハグやキスをしない生活習慣、そして、日曜日の昼食を祖父母を含めた家族で集まって食べる習慣がないことが原因では、と説明したのだが、そう言いながらもイタリア同様に学校閉鎖の時に働く親が祖父母に子供を預けた話なども聞いているので、今後の日本での感染の行方が気になる。
イタリア保健省(Ministero della Salute)が毎日17時に発表する県別感染者数の発表(Covid 19 - Ripartizione dei contagiati per provincia)をもとに筆者が作成
(数値が取れなかった3/1と3/7は空欄のまま掲載)
当初2名だった感染者が40名を超えるのに1週間。ボローニャのあるエミリア=ロマーニャ州では感染者が見つかる前に学校閉鎖を開始していたが、感染が多発している地域(ロンバルディア州)との交流は絶たれていなかったため感染がスタート。その後、日に日に感染者数は増加。WHOの発表によれば感染者の8割が軽症だというこの新型コロナウイルス。最初の感染者が見つかった段階で、すでに感染は広がっている可能性が高いのではないか?
また、イタリアの保健省は毎日18時に新型コロナウイウイルスの感染状況に関する記者会見を行い、以下のような州別感染者数データに加え、県別のデータを更新している。
日本でも県別の感染者数がわかるサイトができたと聞いたので早速覗いてみた。
ここを見て驚いたのだが、日本の感染症病床数の少なさだ。イタリアのことを医療崩壊と言っているので、日本の病床数はさぞかし多いのだろうと予測していたが、実際に見てみるともう既に満床の県もあり、結核病床を利用して対応していることが見て取れる。これまでは「日本の公衆衛生レベルの高さ」や「人混みでくしゃみをできるだけしないようにとの配慮」、はたまた「ただ単に運が良かった」のかわからないが、クラスター(集団感染)が複数発生すれば、日本の医療もあっという間にイタリア同様にキャパシティーオーバーとなることが考えられる。
Q. ドイツで死者が少ないのはホームドクター制度があるため?
A. イタリアにもホームドクター制度はある。
Q. イタリアの医療レベルは低い?
日本のメディアではイタリアの医療で大変な思いをしたという報道があると聞く。確かに私も10年以上前に長男を出産した際にはびっくりするような対応だった。しかし、現在通院している病院は非常に的確な対応をしてくれるので決してレベルが低いとは思わない。我が街ボローニャにあるサントルソラ病院や、リッツォーリ病院は世界的にも有数の病院。
Q. ドイツは消費税が高いから医療制度が機能している?
ドイツの消費税は19%でイタリアの消費税は22%。イタリアではホームドクターの受診は無料。癌治療など特定の疾患や、出産に関しても費用は全て無料。日本の国民皆保険と並ぶほど支援は手厚いと思う。ただ、南イタリアでは医療設備が北ほど充実していないという話はよく聞く。
自分が新型コロナウイルスに感染して苦しむだけでなく、自分の親を感染させて殺してしまうことになった彼の苦しみを想像していただきたい。
また、イタリアでここまで感染拡大した理由の1つに、挨拶の際にキスやハグする習慣に加え、日曜日に大家族が集まってランチをするというイタリア人の家族とのつながりを大切にする人間らしい習慣が裏目に出てしまったのでは、という説もある。これに加え、子供が学級閉鎖中、親が仕事に行くために子供たちを祖父母に預けたことが高齢者の感染者数増加を促進したのではないか、という声も。
どれも数値的に根拠が示されているものではないが、日本でもイタリア同様に子供を祖父母に預けて仕事に行く場合も多々あったと聞く。子供は重症化しないと言う説が有力なようだが、高齢者が犠牲になる可能性は高い。
日本では花見を楽しむ人が結構いるとも聞く。そして、満員電車での通勤日々。全く別世界のようだ。イタリアよりも濃厚接触の機会が多い日本の都心部は、特に注意が必要だと思う。不必要に怖がらせるのは良くないのは重々承知しているが、自分の大事な家族の命がかかっていると思ったら、なんでも我慢できると思う。愛する家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなり、最後のお別れにも立ち会えないというような状況が日本で絶対に起きて欲しくない。
今回、イタリアにおける新型コロナウイルスとの戦いにおいて、コンテ首相は次々と大きな決断を下している。経済がダメになることはもちろんイタリアにとっても大打撃だ。しかし、コンテ首相は一人でも多くのイタリア人の命を救うため、そして、医療現場の負担をできるだけ軽減するために全力を尽くしている。
ここで安倍首相にお願いしたい。この目に見えない敵との戦いにおいて、ワクチンや治療薬が開発されるまで、イタリアのような感染拡大のケースを参考にしながら施策を打っていただきたい。自粛を要請するだけでは、感染拡大を防げなかったのはヨーロッパ、アメリカといった国を見ても明らかだ。
日本人は「和」を尊び、人との関わりを大切にする心優しい国民だと思う。そして、他者に対する気遣いが素晴らしい。しかし、この国民の美徳によって「体調が悪くても同僚に迷惑をかけないために出社せねば」といったように無理をすることも多々あると思う。
ある施策を提案すれば、一時的に国民から大きな不満が出るかもしれない。しかし、安倍首相は今回オリンピックの延期という適切な決断を下された。前例がなく、その上見えないものに対する措置を講じるのは非常に難しいことだと思う。しかし、国民の命を第一に、日本の感染拡大阻止に全力を尽くしていただくことを切に願う。